牛丼よりも愛を大盛、お願いします

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 おっさんの声にすぐに反応しちゃうあたり、俺も相当だよな、って思うけどね。  差し出された食券を確認して「牛丼大盛ですっ!」と声を張る。 「お、政人、俺も同じの」 「親父、いつも言ってるだろうが、先に食券買え。食券。政人、俺も大盛な」 「は、はい~」  うん、武原さん、自分で買わないよね。で、毎回、若頭に注意されてる。それも態となんじゃない? って、最近思うんだけど。もう、ここ、武原組の専用の牛丼屋みたい。店長も顔色悪いんだけど。 「た、高橋くん、そ、それよろしくね」  苗字を呼ぶとか、店長、どんだけ緊張してるんですか。苦笑いしながら、受け取る俺。 「お待たせしました」  カウンターに座るおっさんの目の前に、大盛の牛丼。視線は牛丼から俺に向けられて、ニヤリと笑う。不意にそんな笑みを浮かべられると、動揺しちゃうよ。
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