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第三部:事件を追い、春へ。
プロローグ
2月、初旬のある日。
特捜が解散されて、篠田班が丸々休みにされた。 年末に事故で入院していた班が復帰し、新たに新設した班も仕事に回される。
また、年末に起こった事件の幾つかに目処が見え始めた。
連休を与えられた木葉刑事と里谷刑事の筈だが、2日目に朝からメールを貰う。
- 木葉刑事、本日の午前11時、世田谷区用賀駅に来てくれたまえ。 これは、任務で在る。 -
この後、里谷刑事から突然に電話が入った。
「もしもし、木葉さん」
「里谷さん、どうしました?」
「“どうしました?” じゃないわよっ。 このメール、何よ?」
「あら、里谷さんにもメールが?」
「何、その知った風な言い種」
「たまに、休みに成ると入るんですよ」
「でも、相手先の名前が出ないんだけど」
「あぁ、相手は確か・・。 警察庁長官官房長の下部組織として、‘特殊任命参事官’に就く“鵲參次官”と云う方です」
「かっ、かささぎ…」
その名前を聴いて、里谷刑事は絶望的な思いだ。 あの“G対象事案”と云う、幽霊の関わる事件のみを扱う部署のリーダーだ。
「あ、嗚呼・・まさか広縞が」
驚く彼女だが、全てを知りながらも隠し通す彼だ。
「里谷さん、なぁ~にを言っているんですか。 広縞は、もう死にましたでしょ?」
「へぇ?」
「そうじゃなくて、幽霊が事件を起こしたり。 また、事件の被害者が怨念と成る前に、その犯人を捕まえて怨霊に成るのを防ぐ機関らしいです」
「へぇ? な、何それ?」
「ってか、里谷さんも呼ばれたのは、解りませんね」
「あぁっ、とにかく仕度する」
「へぇい」
「弛いなっ、もうっ!」
「そんなにイキらなくても大丈夫ッスよ」
「後で締め上げてでも、全部を聴くかんなっ」
「あいたた・・頭が痛いッス」
「嘘吐けっ」
着替えた二人は、晴れ渡る青空の下で指定された場所に向かった。
その裏側で始まった捜査は、表とは関わりが無い。
が、木葉刑事に休みを宛てた庶務課では、上からの命令に首を捻った。
“上って、一体誰?”
篠田班長も、木田一課長も知らない事だった。
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