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──先輩は変わらず飄々としたまま、卒業していった。
あれから1ヶ月。
先輩のいなくなった部室に『帰る』。
よく二人で廃部にならなかったもんだと独りごちる。
さすがに一人になり、廃部が決定した。
使う部活もないから、通い慣れたこの場所に来ても気が付かれない。
一人、思い出に浸る。
今でも思い出す、先輩との他愛ないスキンシップの日々。
おかしいとは分かっていたけど、それでも忘れられなくて。
夕暮れ時、通い慣れた道を一人帰る。
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──トュルルル……
暗い部屋に響く着信音。
無意識に通話ボタンを押す。
『よお! 元気にしてたかあ? 俺がいなくて淋しかったんじゃない? 』
聞きたかった声が響く。
夢か、夢だなとまた寝ようとする。
『おまえのことだから寝惚けてるんだろ。ちょっとくらい起きろよ、相手しろよ』
嗚呼、夢であって欲しかった。
こういう人だと分かっていたはずだった。
「……今、何時だと思ってるんですか」
『ん? ……二時だな。それがどうした? 忙しくてさー。やっぱおまえと話してるのが一番癒されるわー』
いけしゃあしゃあと。
「……もう!俺はまだ高校生なんですよ?! 寝不足になって遅刻したらどうしてくれるんですか! 」
モヤモヤしたものを吹き飛ばすかのように叫ぶ。
『……俺さ、気がついたんだよ。この1ヶ月でさ。新しい仲間とワイワイしてんのもいいけど、やっぱおまえのこと思い出しちゃってさ。おまえといるのが一番好きなんだなって』
……振り払わせてはくれなかった。
「どんな思いで俺がいたと思ってるんですか! 」
『ごめんな、やっぱ諦めきれないわ。嫌でも付き合ってくれよ。おまえが好きだから』
「!? 」
本気にしちゃいけなかったのに、この人は俺を離してはくれないらしい。
「……ズルいですよ、バカ」
『へへ! これから毎日掛けるなー? お前の声聞きたいし』
……前言撤回。
「アホですか! 俺の睡眠時間削ってメンタル抉るのやめてください! 」
甘酸っぱいような日々は訪れないらしい。
それでも俺は──この人が好きだから。
Fin
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