番外編 拍手お礼31

3/8
3450人が本棚に入れています
本棚に追加
/700ページ
「あー、面倒くさくて、顔出さない奴もいるだろうな。俺なんて、ガキの頃から転校が多くて、成人式に出たところで、知り合いがほとんどいないから、妙に寂しかったぞ。これなら出ないほうがよかったと思ったし」  社交的な澤村にもそういうことがあったのかと思った和彦だが、次の瞬間には眉をひそめる。 「で、どうして成人式の話題になってるんだ」  察しが悪いと言いたげに、澤村に乱暴に肩を叩かれる。 「少しは想像力を働かせろ。久しぶりに同級生たちと顔を合わせるとなったら、ちょっとは自分を変えてみたいとか、思う人間もいるかもしれない。男も女も関係なくな」 「……改めて聞くが、そういうものなのか?」 「さあ、わからん。俺は美容外科医であって、美容外科手術を受ける患者じゃないからな」  和彦が横目で睨みつけると、澤村はのんびりと笑った。 「こういうことをあれこれ考えてみると、患者の一人一人が、なんだか愛しくなってくるだろ。俺はときどき、機械的に処置を施しながら、むしょうにこの仕事が空しくなってくるときがあるんだが、こうやって乗り越えてるんだ。佐伯は――まだ大丈夫そうだな」     
/700ページ

最初のコメントを投稿しよう!