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ウィダニー
「あのさ、ウィダニーって、知ってる?」
本郷のスイッチは、その一言で入ったんだと思う。
金曜日の昼休み。3年生になった俺らは、いつものメンバーで昼メシを食っていた。うちの高校は、2年から3年になるときにはクラス替えがない。俺と本郷(と柳瀬と加古と秋山)は、去年からのクラスメイトだ。
男子高生の昼メシの話題といえば、控えめに言っても半分はエロい話。やったとか、やりてぇとか。
一般的な話とか、自慢話なら別にいい。でも、「おまえはどうなのよ、海老沢」そう、話を振られるとちょっと困る。
俺は童貞だ。
でも、エッチの経験がないわけじゃない。
なんて、とても言えない。
「ウィダニー? 何それ? なんかエロいにおいすんだけど」
食いついた本郷に、悪友がにやつく。
「あの、ゼリーのやつ、あんじゃん? 10秒でなんとかってやつ。あれをさ、先っちょにつけて、中にぃ……」
柳瀬は見えないそれを、右手でゆっくりと握りつぶした。
「おえぇーー!?」
「マジぇーー?!」
未知の体験に、みんなは色めき立った。
一番目を輝かせていたのは、間違いなく本郷だ。そしてそれを、「自分以外に」やってみようと思っているのも、この中ではあいつだけ。
「ものすごい、イイらしいぜ……?」
そう言われ、本郷はちらりと俺の方を見た。
今日は放課後こいつん家に行く予定……
悪い予感しかしなかった。
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