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ひびきは部屋に入ると、真っ暗な部屋を見て、また申し訳なさそうに僕に言う。
「ねぇ、もしかして、もう寝てた? 私、起こしちゃった?」
「あ、いや……いつもこんな感じで過ごしているんだよ」
「そうなんだ」
僕は自分がひびきに会えず、裏切られたような気持ちで何も手がつかず、一日真っ暗な闇の中に落ちていたなんて言えるはずがなかった。それを取り繕ってから、キッチンに行き、ホットミルクをひびきに出した。
「タオルも使ってくれていいから。これも飲んで」
「ありがとう。あの、それでね……」
ひびきと並んでソファに座る。ひびきは言いにくそうにしているが、それをどう僕に伝えるかで悩んでいるようだった。そして、ひびきが零していく。
「実はね。昨日、帰りが遅くなった時に、お父さんにユーリの事を言ったの。そうしたらお父さんが、ユーリの事を知っているみたいで……その、変わった人だから、もう近づいたらいけないって言ってきて……。わ、私はね! 猛反対したんだよ!? ユーリは優しくて、私とシロを助けてくれたんだって! お父さんにはわからないって言ったんだよ! でも……行ったら家を出てけって言われて……。私、どうしたら良いかわからなくなって」
本当に悩んでいた様子で、たどたどしく言うひびき。
そうか。彼女の父親は僕の事を知っていたんだ……。
それじゃあ彼女を僕に近づけたくないのも……わかる。それは無理もない事だ。
僕はひびきに向き直って、
「じゃあどうしてこんな時間に来てしまったの? 親御さん、心配していると思うよ? 今からでも帰った方がいい」
僕が諭すように言うと、ひびきが悲痛めいた大きな声を出して、
「嫌なの!!」
「どうして!?」
僕は彼女を問いただすように声を荒げて言う。
僕の事を知っている親にそう言われたのなら、仕方の無いことなんだ。なんでこんなにも、ひびきは夜中家を抜け出してまで来てしまったんだ。これは僕に課された運命なんだ。ひびきには関係の無いことなんだ。僕が人に敬遠されるのは……仕方の無いことなんだ……だから、ひびきがここまですることないだろう!
僕は自分の想いを抑え込んで、平静を装って続ける。
「ダメなんだよ。もう君とは会えないんだよ。親御さんに心配をかけてまで会うことないんだよ」
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