宝石は煌めく

1/1
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

宝石は煌めく

私は美少女だと自覚している。 ぱっちり二重に筋が通り小さく高めの鼻に、桜色でプルプルに潤いを含んだ唇。毎日ケアを欠かさないキメが細かくて陶磁器みたいにスベスベで白い肌。髪も清楚に黒髪で風が吹くと優雅に靡く。 だから今まで墜とせなかった男はいない。なのに今私はとてもイライラしてるわ。 どうしてイライラしているのかは分かっている。理由はあの人が全く振り向いてくれないから。あの人というのは、私が絶賛片思い中の先生。 先生はとても華奢な体格で弱々しい話し方をするから、生徒の皆になめられている。最初は私もそうだった。でもある日を境に私の先生を見る目は180°変わったのよ! その日はたまたま遅刻寸前に校門に駆け込んだの。先生が校内1の不良に思い切り殴られ蹴られながらも、彼を堂々と叱り続けていたのよ。私はその光景に恐怖感しかなかった。でも普段の先生とギャップがありすぎて、気になって堪らないから説教の内容を聞くことにした。先生はバイク登校を咎めてたのよ。 結局彼は満足に暴力を振るうと去っていった。私は先生が心配で駆け寄った。先生は意識を失いかけながらも、「私は貴方の為に叱っているのです…どうかご自身を大切にしてください…」と譫言を呟いてた。冷静になった私は保健室の先生を呼んで後は任せることにしたの。その日はそれでお終いだった。 後日彼は還らぬ人となった。死因は登校中のバイク事故。校長先生を含めて、先生以外全員が彼のバイク登校を校則で禁止しているにも関わらず、見て見ぬふりをしていた。そしてそんな彼が死んだことを厄介払いができたとでも思っているような顔をして告別式は執り行われた。それは彼の両親も同じだった。 でも先生だけは違った。悲痛に顔を歪ませ声にならない悲鳴をあげながらひっそりと涙を流していた。私は不謹慎にもそんな先生がとても美しいと感じたわ。先生だけは彼のことを本気で心配していた。だからあの日あんなにも真剣だったのね。 他の大人や生徒とは違って、先生は純粋で綺麗な宝石みたいだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!