勉強

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「いらっしゃい。」 カウンターの中から貫禄のある職人さんが 声をかけてくれた。 大将かな。。 ペコリと頭を下げる。 「三代目から伺ってますよ。どうぞ。」 にこやかにそう言い 着物を着た女性が どうぞこちらに。と 誘導しながら 二階へ上がっていく。 後ろを二人で ビクビクしながら着いて行くと 個室に案内された。 専用のカウンターがあり 職人さんが待ち受けている。 いや。。流石に個室は。。 急に懐が心配になる。 角刈りの職人さんは ニコッと微笑み 「三代目から伺ってますんで ご心配なく。」 俺たちに座るよう促した。 神田と顔を見合わせながら おずおずと カウンターの椅子に座る。 飲み物を聞かれ ビールを頼んだ。 「・・こういう場所って日本酒じゃないの?」 神田が本家の宴会以外では日本酒飲まない癖に 日和ったのか そんな事を口にすると 職人さんは笑いながら 「好きなものを 飲んで頂ければいいですよ。」 と 口を挟み じゃあ。。と神田もビールを頼んだ。 カチンとグラスを合わせる。 冷たいビールが喉を通り やっとほっと落ち着いた。 神田も同じ気持ちだったのか ビールのグラスを置くと ほっと息を吐き出し 職人さんへと視線を移す。 「あの。いつも高嶺兄貴がこちらに伺う時。。」 職人さんは ああ。と白い歯を見せ 「ええ。高嶺さんがプライベートで来られる時 握らせて頂きます。浪川です。 三代目とご一緒の際は うちの大将が握りますんで。 先程 高嶺さんからお電話頂きまして 握ってやってくれ。と仰せつかりました。 若輩者ですが よろしくお願いします。」 慌てて二人で深々と頭を下げる。 「なんで知ってんだよ。」 神田の裾を引き 小声で聞く。 「迎え行った時 見送りに出てた人だな。って 思ったんだよ。お前も迎え 行った事あるだろ。」 あるけど。。 顔なんか全然覚えてない。
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