春が芽吹くのは何処。

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どこが嫌いかと言われればいろいろ挙げられるわ。 まず、その話す声が嫌い。 品性のない話題がもっと嫌い。 利益しか考えない頭の中身がさらに嫌い。 言い出したらキリがないし、元来の人間性は冷たいとも思う。 目の前の相手に対して敬意を払う素振りはしても、それはメッキだとわかってしまう浅はかな振る舞いはガッカリするものばかり。 今だって必死に上司ぶりたくて弱味を見せないように仮面を被ってる。 笑いたくなるほど、弱くて脆い人だと彼の眼鏡のブリッジを上げる仕草に思う。 「そんなことを言われても無理なものは無理なんです」 人が5人も入ればいっぱいいっぱいの喫煙室で私と彼の距離は3メートル強。 パーソナルスペースは十分離れているのに、なかなか彼の顔を見れないのは私元来の癖だろう。 何か意見を通したいときには相手の目を見て、捉えて、離さない。 これは交渉手段のセオリーなのに、相手が彼じゃなかったらできたのにと思う私の視界は彼の顔を3秒とも見れない。 辛うじて声だけは冷静風に仕上げれた。 それだけわかっているのに私は彼の顔を見ない、違う、見れない。 理由はたぶん、いろいろとあると思う。 けど……。
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