第4話 森の縄張り

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『ぐっ…き、貴様ら…!』 「!」 すると、倒れていた狼達は次々とふらつきながら立ち上がる。 響達は、再び恐怖を実感したのか身を固まらせた。 あの轟音をまともに受けたのに、立ち上がれるのか。 恐怖と同時に驚いた感情が募った。 『何をしたかは知らねえが…このまま生きて返すわけにはいかねえ!』 『ひいっ!』 『こ、こいつらさっきより相当怒ってるぞ!』 ウサギ達は、藍色の狼の鋭い眼光に怯え響の足元にしがみつく。 他の狼達も、響達を睨みつけている。 今度こそ、奴らに捕らわれたら命はないだろう。 響は、あることを決断し、足元にいるウサギ達の目線に合わせるようにしゃがみ込んだ。 「おい、ケルベロスもどきの三匹。」 『誰がケルベロスもどきだ!?』 『俺達は、正真正銘のケルベロスだぞ!』 『そうだそうだ~!』 響の呼び方に、ウサギ達は不満をぶつける。 しかし、彼は三匹に「しーっ」と自分の唇の前に人差し指を立てた。 「いいか、よく聞いてくれ。俺が奴らを引き付ける。その間に、お前たちはこの森の奥に全力で走って逃げろ。」 『なっ!?』 響の提案に、ウサギ達は驚いた顔をした。 『に、人間!何を言っているんだ!?そしたら、お前が捕まって食われてしまうでないか!』 『兄者の言う通り!何故、そこまでして俺達を逃がそうとするんだ?』 『僕も知りたーい!』 納得がいかない三匹は、彼に問い詰める。 まだ知り合って間もないのに、どうしてこんな提案をしたのか。 疑問がぶつかる中、響はゆっくり立ち上がりウサギ達に背を向けた。 「これは、俺の勝手な理由だけど…」 殺意をむき出しにする狼達に注目されるように、右手を上げた瞬間彼は口を開く。 「小さい動物が食われるところを、見たくないだけだよ。」
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