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そのようなことがあって以来、天本とはなんだかギクシャクしたような雰囲気になってしまった。
おそらく第三者が私たちを見たら、以前と何も変わっていないと言うのかもしれない。
けど、私たちの中ではやはりあの出来事…というか私が起こしてしまった事件…というか事故みたいなものが原因となって明らかに変な感じになっていた。
会話はする、普通に。でもなんだかぎこちない。
今まで通り一緒の空間にいることもある。でも、なんだかお互い意識してしまう。そんな胃に悪い期間が3日間ほど続いた。
「あのさ」
そして、そんなある日、今日も今日とて駅前のカフェに二人して寄ったその帰り道。
私は自分の中で眦を決するかのように彼女の背中に声をかけた。
「ごめん。なんか怒ってる?」
きっと彼女は言うだろう。「怒ってない」と。
でも、今の私にはそれくらいしかかける言葉がなかったのだ。
「怒ってる…とかじゃなくて」
天本は小さくそうつぶやた。こちらをチラチラと伺いながら言葉を選ぶといった感じに。
「ちょっとビックリしたっていうか…」
彼女のその言葉に対して、すぐに私の脳裏に浮かんだのは「自分だってやったくせ」という反発にも似た感情だった。
だけど、それを口にすることはない、そんな些細な感情よりも安堵感の方がはるかに大きかったから。
怒っているわけではない。
嫌われたわけではない。
ただそのことだけが、私の心にとても大きな安寧をもたらしたのだった。
「行こっか」
天本は嬉しそうに笑いながら手をこちらに差し伸べてくる。まあ手を繋ぐくらいだったら普通の女友達でもやることだ。私は何の躊躇もなく自分の手を差し出した。
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