1章 ぜんぶ、晴のせいー2-

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1章 ぜんぶ、晴のせいー2-

◆◆◆◆◆   僕の前に幽霊猫が現れたのは十年前。つまり、両親共々弟が亡くなって間もなくのことだった。  最初はもちろん幽霊だなんて思わない。ただ、弟がいつも抱いていた黒猫のぬいぐるみに似てるなぁって懐かしむ程度。きっと見たら、「飼いたい拾いたい連れて帰りたい!」て叫ぶだろうなと想像しては、うっかり泣きそうになった。  というのも、当時の僕は祖母に引き取られたばかりで、学校まで転校した。環境の激変に対応できず、何もかもが心細くてたまらなかった。状況などお構いなしに、不意に涙が零れるのもしょっちゅう。例えば登下校の最中や、授業中。ご飯を食べている時や、本を読んでいる時。  情緒不安定ってやつだ。  そんな、瞬間泣き喚き機みたいな僕はやや遠巻きに見られた。  でも、変わった子、というレッテルが貼られたのは幽霊猫のせいでもある。 「付いてこないでよ! 家じゃ飼えないんだから」    登下校の度にふらりと現れた猫にそう注意をした。僕としては、見えている猫に声を掛けているわけだが他の人には違う。だからアイツやばくない? となる。まぁ、猫に声を掛けてる時点でどっちみちやばいんだけどさ。     
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