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監 禁
暗い山道に、ライトの付いた手押し車が進むガラガラという音が響く。大和に浜木と名乗った猟師は、民家裏から続く車道で狩猟小屋近くまで移動すると、そこから小屋までは手押し車で大和を運んだ。
小屋の前には鎖に繋がれた黒い狼が伏せていた。人の気配を感じて素早く立ち上がると、背中の毛を逆立てて、唸りを上げた。猟師の姿を確認すると、鋭い牙を振りかざして飛びかかった。しかし、ガシャン!という金属音が響き、狼は首から地面に叩きつけられた。
首には分厚い首輪がはめられ、首輪から地面には太い鎖が伸びている。その先の、積もった枯葉に隠された楔は、数メートルの深さで山に埋められていた。
「そう暴れるな。それは熊用に作られたプレート入りの首輪だ。お前の力じゃ壊せんょ」
勝ち誇ったように笑う浜木の目の前で、黒い狼は全身を震わせて立ち上がると、恐ろしい獣の姿に変わった。
「は…はは」
浜木は顔を引きつらせると、手押し車を置いて、肩に担いでいた猟銃を構え弾を装填した。ゆっくりと獣に近付き頭に銃口を向けると、太くて鋭い牙でガチン!と噛み付かれた。引き金に指を置くも、殺してしまっては金にならないと躊躇する。
額に脂汗が浮かぶのを感じたが、野獣の太くて大きな指では首輪の留め金を外せない事が分かると、銃口を引き抜いて弾を脱包し、胸をなでおろした。
「まさか本当に人狼なんてもんが居るとはねぇ。熊対策しろと聞いちゃぁいたけど、この目で見んと信じられんな」
首輪と鎖を忌々しく引き暴れていると、獣の鼻に覚えたての人間の匂いが届いた。
「…ヤ…マト…。おい、ハンター……ヤマトに何をした」
獣の顔が怒りに歪むと、対称に浜木は野獣の言葉を聞いて小躍りした。
「なんと言葉を話すのか! これは面白いw バイヤーからの問い合わせが殺到するわけだ」
浜木は小屋前の柱のような木の前で、猟銃を地面にそっと置くと、手押し車をギッと立てた。ズルリと大和が地に落ちる。
暗闇が広がる木々の中に、手押し車のライトに照らされて大和の小さな顔が浮かび上がった。
「ヤマト‼︎ くそっ、ソイツはただの人間だ。オレとは無関係だぞ!」
吐き出すように獣が叫ぶと、浜木は黙って大和を運び、木に腕を回して手枷を取り付けた。
「確かにお前とは無関係だ。コイツはオスのΩでな。エリートαを産みやすいとか何とかで、お前より高値で売れるんだょ」
そう言うと浜木は、ズボンのポケットから巻きタバコを取り出して火を付けた。辺りに焦げたような臭いが広がる。鼻に合わないのか、獣が眉をしかめた。
「臭いか? これはな、ヨモギやらキノコなんかを巻いた手製の煙草でな…お楽しみ前には一服キメるんだ。吸うと五感が野生動物並になって体臭を消してくれるんだょ。だから、狼の鼻を持つお前でも、ワシの存在に気付けなかっただろぅ?」
煙草のヤニで茶色くなった歯を見せびらかし、胸ポケットから小さな小瓶を取り出した。
獣は極太の鎖をピンと張らせて大和の側へ行こうとするが、少し離されている為近付けない。足の爪で地を引っ掻き唸って見せたが、浜木は余裕顔で大和の下半身を脱がせた。
「これはただの気付薬だょ。心配せんでも、深夜までには仲間がお前たちを引き取りに来る。その前に…ちょっと味見させてもらうだけだ」
浜木は小瓶の蓋を開け、大和の鼻近くでユラユラと揺らした。すぐに強い異臭に大和が目を覚まして咳き込むと、浜木は小瓶をしまい、タバコを消して携帯灰皿に放り込み、自分のベルトを外し始めた。
「うーん……、…浜…木さん…?」
自分の上に浜木が跨っている状況が理解出来ず、身体を起こそうとして、大和は自分の両手が木を介して繋がれていることを知った。すぐに下半身に何も着けていないことにも気付くと、やっと自分の現状を把握した。
「浜…木さん、浜木さん、浜木さん! こんなことはやめてください! どうしてっ…⁈」
全力で抵抗する大和を、全体重で押さえつけ、浜木は大和の耳元で囁いた。
「悪いが、オスΩなんかに産まれた自分を恨むしかねぇな。買い手が来るまでワシの相手をしろ。買い手が来たら、またそいつの相手だ。Ωが普通に仕事なんかして働いてんじゃねぇよ、足開いてよがってりゃえぇんだわ」
Ωを人間だと思っていないその言葉に、大和は自分がΩであることや、世間でのΩの扱いを思い出した。
「狩った鹿の廃棄部位を引き取ってもらいに訓練所に行ったら、あすこの生徒にお前がオスΩだと聞いてな。お前が狼調査をするよう仕向けたら、まんまと両方手に入った、ハハハ」
浜木に足を開かされ腰を持ち上げられると、大和は天地が反転した世界の先に、低く唸りながら苛立たしげにもがく黒い影を見つけた。人狼の姿で、太い鎖のついた分厚い首輪と格闘している。
「ロ……キ…」
大和が名前を呼ぶと、黒い影はゆっくりと立ち上がった。怒りで色褪せた木朽葉色の瞳が大和を捉えると、哀しみで血走って紅く輝いた。そして、深く、深く息を吸い込むと、
「ウォーーーーーーーーーーーーーーーン!」
と、辺りをビリビリと震わせる恐ろしい咆哮を響かせた。
ズクン…
ロキの起こした地響きが、大和の身体を充足の平穏から目覚めさせる。明らかに違和感のある鼓動の加速、身体が熱くなり呼吸が乱れる。
ロキの怒号に一瞬怯んだ浜木だったが、大和の急速な発情を気取ると、舌舐めずりをしてそのシャツのボタンを外した。
浜木の手がヒルのように全身を這い回ると、大和の肌が本人の意思とは無関係にバラ色に染まる。ピンク色の頭をもたげた分身から透明の糸が引き、後ろの口がヒクつき始める。
大和のはだけたシャツの中に顔を埋め、小さな胸の突起を口に含むと、浜木は秘部への入口に指を押し入れた。
「い…いやだ……、いやだぁっ…!」
ゾクリと身体が疼くのを感じ、止められない快楽への期待と渇望に、精一杯の抵抗をする。しかし、Ωの身体は当然のごとく淡々と種を迎え入れる準備を進める。
「う……う……」
浜木の乱暴な愛撫にもグチュ、グチュといやらしい音を響かせ、乳首が立ち上がり、無意識に気持ちの良い部分を探して腰を揺らしてしまう。
「そうか、そんなに欲しいのか。βのワシでもクラクラくるわぃ。すぐに入れて掻き回してやるょ」
浜木は茶色い男根をあてがうと、ヒクつく入口に擦り付けた。
「…ロキ……見……な…」
大和が風の囁きのような小さな声で願い、目を閉じると、ザァッと強い風が吹いて木の葉が騒めき辺りが急に明るくなった。
浜木の男根が目標を定め大和に押し入りかけたその時、バキッ!という重たい音がして浜木の身体が横に飛んだ。
突然足が自由になった大和は、恐る恐る目を開けると、月明かりの中に見知らぬ全裸の人間の男が立っていた。
「二兎追うものは一兎をも得ず…ってな」
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