エピローグ

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薄紅色の桜が、ふわりと舞う。 見上げると、雲一つない青空に淡く色づいた花びらが映えて、とても美しい。 毎年、母と兄と私で来ていた桜並木。 今年も、無事に来ることができた。 ただ、一つ違うことがある。 ゆっくりとしか歩けない母の隣には、不愛想な顔をした父が歩いているのだ。 「綺麗ですね」 「そうだな」 「いい天気ですね」 「あぁ」 忘れた頃に聞こえる会話は、やっぱり会話なんて言えるものではない。 それでも、母はとても幸せそうに笑って、父を見上げている。
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