頑張れ汰士

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その週が明けないうち、 「ええか、 まずは、あっこの辺りに立って顔を見せ。 客から声が掛かったら金の交渉はせんと、その場にいる仲間か八坂に知らせよし。 俺んとこ直接指名掛かるようになったら、こっちから人やって呼び行かせるからな。 せやけどお前は今日が初めてや、手始めに常連の手堅い客付けたろ」 川沿いの通路を抜けたところまで来ると、京極と呼ばれている男は慣れた早口で俺の耳に囁いた。 「え、、、っと」 まてよ、まてまて、、、 スタート時点から雲行きが怪しくなってないか? 水無月さんの話では客に扮した捜査員が俺を見つけて買うって段取りで、、、 「あ、あの、べ、べ別に常連なんかじゃ なくても、俺はその辺うろうろしてる客で、、、」 「アカンアカン、お前素人やろ? それに最近は囮捜査ってのもあるんや。 痛くもない腹探られたらかなんし、 こっちも最初(はな)っからお前を信用してるわけやない」 「いや、、、あっ」 っこれは、、、 この男の方が一枚上ってことじゃないのか、、、? 『あ、鴨川さん?  昨日言うてた新顔が今きてんわ。 、、、あ、ほんまですか?  5分? はいはい、ほんなら待ってますー』 京極さんと話してる電話の相手は、あらかじめ俺の事を聞いていた常連らしく、すぐ近くで待ってたようだ。 「良かったな、こん人は金払いええし、 えげつないことしないて、うちの子ぉらにも人気や」 軽く鼻をすすった京極さんは、 「ま、最初は手取り足取り教えてもらんなんから、お前の取り分は無しや、次から頑張り」 「ええっ」 いや、金なんかどうでもいいけど、、、 手取り足取りは困る 困る、 困るぞ どうしよう、、、 でも、、、 水無月さんが今もどこかで俺の事を監視しててくれてるはずだし、チョーカーにもマイクが仕込んであるし、、、
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