3933人が本棚に入れています
本棚に追加
/346ページ
「未来! 大斗たちもう少しいられるって」
「ほんと!? やった! 大ちゃん、ブロックでおしろ作って!」
ぴょんぴょん飛び跳ねて、未来は玩具の棚の一番下に置かれているブロックのケースを引っ張り出そうとする。
「おれも!」と言って、勇斗も未来と一緒にケースを引っ張る。
二人がかりで引っ張った結果、棚からは取り出せたが、蓋が開いてブロックが和室一面に飛び散った。
「あーあ」と、龍也が笑う。
「勇斗のせいだからね! もうっ!」と、未来が腰に手を当てて勇斗を睨む。
「あれ、千尋の真似?」と、あきらも笑いながら言った。
「やめてよ。私はあんな言い方――」
「――千尋が比呂さんを叱る時の言い方にそっくりだよ」と、電話を終えたさなえが戻って来た。
「やっぱり」と、あきら。
自分ではそんなつもりはないのだが、よく言われる。
未来の話し方や仕草が私に似てきたと。
「夜ご飯までに行くって言っちゃった」と、さなえがダイニングの、あきらの隣に座った。
私は龍也と駿介のコーヒーと、子供たちのジュースをリビングのローテーブルに置くように、麻衣に頼む。
「あきらと麻衣もコーヒーでいい? さなえはどうする?」
「私はお茶がいいな。あ! 私やるから、千尋は座ってなよ。お腹の中で動いてるの、わかるよ」
「ありがと」と言って、私はあきらの正面、麻衣の隣に座った。
「ホント、すごいねぇ」と、麻衣が私のお腹を撫でる。
それに反応して、子供がキックなのかパンチなのかを繰り出す。多分、キック。
「あきらは? ゆっくりしていけるの?」
「うん。ホントは今日、前の上司と会うことになってたんだけど、明日にして欲しいって言われてここに来たの。龍也は急について来たから、札幌駅に着いてから大和さんに電話したのよ」
「そっか。どこに泊まるの?」
「決めてない。実家にも来ること言ってないし。私一人なら実家でもいいかなと思ったんだけど、何時になるかわかんなかったし」
「あ! じゃあ、あきらと龍也、ここに泊まって? ホントは比呂さんにそうして欲しいって頼まれたんだけど、明日は朝から駿介の妹と出かける予定を入れちゃってたの」と、麻衣。
比呂がそんなことまで頼んでいたとは。
ホントに過保護なんだから。
そう思いながらも、胸の奥が温かくなる。
タイミングよく、比呂からの着信。
最初のコメントを投稿しよう!