番外編*家族が増える日

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「未来! 大斗たちもう少しいられるって」 「ほんと!? やった! 大ちゃん、ブロックでおしろ作って!」  ぴょんぴょん飛び跳ねて、未来は玩具の棚の一番下に置かれているブロックのケースを引っ張り出そうとする。 「おれも!」と言って、勇斗も未来と一緒にケースを引っ張る。  二人がかりで引っ張った結果、棚からは取り出せたが、蓋が開いてブロックが和室一面に飛び散った。 「あーあ」と、龍也が笑う。 「勇斗のせいだからね! もうっ!」と、未来が腰に手を当てて勇斗を睨む。 「あれ、千尋の真似?」と、あきらも笑いながら言った。 「やめてよ。私はあんな言い方――」 「――千尋が比呂さんを叱る時の言い方にそっくりだよ」と、電話を終えたさなえが戻って来た。 「やっぱり」と、あきら。  自分ではそんなつもりはないのだが、よく言われる。  未来の話し方や仕草が私に似てきたと。 「夜ご飯までに行くって言っちゃった」と、さなえがダイニングの、あきらの隣に座った。  私は龍也と駿介のコーヒーと、子供たちのジュースをリビングのローテーブルに置くように、麻衣に頼む。 「あきらと麻衣もコーヒーでいい? さなえはどうする?」 「私はお茶がいいな。あ! 私やるから、千尋は座ってなよ。お腹の中で動いてるの、わかるよ」 「ありがと」と言って、私はあきらの正面、麻衣の隣に座った。 「ホント、すごいねぇ」と、麻衣が私のお腹を撫でる。  それに反応して、子供がキックなのかパンチなのかを繰り出す。多分、キック。 「あきらは? ゆっくりしていけるの?」 「うん。ホントは今日、前の上司と会うことになってたんだけど、明日にして欲しいって言われてここに来たの。龍也は急について来たから、札幌駅に着いてから大和さんに電話したのよ」 「そっか。どこに泊まるの?」 「決めてない。実家にも来ること言ってないし。私一人なら実家でもいいかなと思ったんだけど、何時になるかわかんなかったし」 「あ! じゃあ、あきらと龍也、ここに泊まって? ホントは比呂さんにそうして欲しいって頼まれたんだけど、明日は朝から駿介の妹と出かける予定を入れちゃってたの」と、麻衣。  比呂がそんなことまで頼んでいたとは。  ホントに過保護なんだから。  そう思いながらも、胸の奥が温かくなる。  タイミングよく、比呂からの着信。
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