7月2週目

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「んう……」  50分も寝ていたのだ。完全に寝起きの顔になっている。 「清香、顔に跡ついてる」 と璃子が言った。 「あんた、すごいくまだね」  環菜が口を半開きにして言った。 「くまってどっちのくま?」 とあかりが言った。 「そりゃ、寝不足でできるほうのくまだよ。――動物の方だと思った?」 「だって、文字だけじゃ、イントネーションないからわかんないじゃん」  あかりは口をとがらせて言った。 「せめて、漢字使ってくれればわかるのに」 「だから、そういう話に脱線していかないの」  璃子が2人の間に割って入った。 「ぐううう」 と清香が言った。――いや、正しくは清香のお腹がなった、と言うべきか。 「朝は?」 と環菜が聞いた。 「食べた」  清香はむにゃむにゃ答えた。「食パン4枚とハムと……卵がけご飯と鮭と……バナナ2本とりんご1個」 「まあまあ食べてるね、相変わらず」  璃子があきれて言った。「和洋どっちも食べてるじゃん」 「でも、清香にしては少なくないか?」 と環菜は言った。「清香なら1斤は食べると思うけど」 「あ、確かに。――って、清香、また寝るんじゃない!」  璃子の怒号もむなしく、清香のまぶたはまた重く閉じてしまった。 「だめだこりゃ」  環菜は肩をすくめた。 「部活までに戻るかな」  あかりが不安そうに言う。 「からあげ……ハンバーグ……チーズ……マシマシ……」  夢とうつつの間にいながら、清香は何やらぶつぶつ言っている。 「多分――大丈夫じゃないかな」 と璃子が言った。「単純に、疲れてるんだと思うよ」 「単純に、か」  あかりが小さな声で言った。 「2時間目終わったら、購買に行って、この人に何か買ってきてあげようか」 と環菜は璃子に言った。 「そうね。寝て元気になったら、今度はお腹空いたって大騒ぎしだすよ」 →→NEXT:帰る前に
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