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その男の子の顔は――。
ヴー――……。
けたたましい携帯のアラームの音に飛び起きた。
急いで枕元の携帯を手に取るが、画面は昨日のハムスターの飼い方のページ。
サイレンのような大きな音は私の腕に装着したブレスレットからだった。
「え、うわ、なんで? どうやって止めるの?」
真っ赤なブレスレットには、ボタンもなければ溶接あともない。綺麗な表面にも関わらず、全身が痺れそうなほど大きな音だ。
「どうした、流伽!」
ドアが突然浮き上がり次の瞬間、リビングに飛んで行った。
テーブルの上においてあった花瓶をなぎ倒したドアを放り投げたのは、小さなハムスターだった。
「一慶さん」
「どうした? 敵か? 何があった!?」
心配そうに私のベットの周りを跳ねまわる一慶さんに、呆然としながら答えた。
「赤い部屋に男の子が閉じ込められていました」
「……赤い部屋?」
「ママが泣いてて、パパが怒ってて、私は叫んでて、男の子は腕を押さえてうずくまってて」
夢……?
それにしても母の泣き声や、母の手を引いて歩いていく記憶のリアルさに、額に浮かんだ汗が頬を伝った。
「あの男の子……一慶さん?」
記憶にない。でも記憶にない中に存在するとならば、私を選んだ一慶さんしか浮かばない。
「流伽」
「はい」
「お赤飯だ」
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