躁状態

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入社3年目の年末、31歳のたけしは残業と 徹夜で仕事に終われ、 極限状態になっていて、 頭を使い過ぎて頭が働かなくなっていた。 夜になって誰もいないオフィスで 「あーこれは違う。これはこうだ。」 と、自問自答しながら効率の悪い仕事を していた。そんなとき、工場で仕事をし ていて、2階に行くことがあった。 2階にあがると入口の所にたくさんの 書類が置いてあって、 渡辺さんという女性が出てきた。 「これ運びますね。」 「ありがとう。」 数日後、同じシチュエーションがあった。 「もう1度同じことが起こるよ。」 と、渡辺さん。 「2度あることは3度あるって 言いますもんね。」 渡辺さんには、職場の片想いの るみちゃんの話をしていて、 「木村くんの実家はどこなの?」 「岐阜です。」 「岐阜のどの辺り?」 「○○インターおりてすぐの所です。」 「そうなんだね。結構遠いね。」 「高速で2時半くらいかはかります。」 数日後、午後から配線のばらしが あって、他のメンバーは帰っていて、 配線のやり直しをやっていた日、 たまたまトイレに行こうとしたとき、 階段の下で先輩の坂井さんと会い、 しばらく会話をしていた。 そうしたら荷台に荷物を運んだ業者が やってきた。隣にはるみちゃんがいて、 迷わず、 「これ手伝いますね。」 「木村くん優しいな。」 坂井さん、ナイスアシスト。3度目は渡辺さんじゃなくてるみちゃんに 変わったと思った。 いいところを見せれたと思い、 いい気分だった。寮に帰って、 寮母さんに在職中のO社はある有名な 紅葉スポットの赤い橋を設計していて、 それをみたトヨタの関係者が、 O社に仕事をくれるようになったと聞いた。 なんとか仕事を年末に終えて実家に帰省した。 幼馴染みの徳田の家に行って、 徳田の嫁と、同級生の田島と話した。 俺ばかり仕事のことや、 るみちゃんの話を3時間くらいし、 徳田の家に泊まった。 翌日の朝、山野主任から電話が入った。 「木村くんは、3日から出勤でいいから。」 「わかりました。」 徳田の家をあとにして、 実家に帰り、来年の居間のカレンダー の表紙をみたら、なんとO社が設計した 赤い橋だった。これだけ偶然が続くと 何かいいことがあるんじゃないかと、 俺はハイテンションになっていた。
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