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episode250 愛と愛
「まさか……」
遠くからパトカーのサイレンが近づいてくる。
鉄柵越しに握った
征司の手を僕は振り払おうとするけれど。
「まさか何だ?」
体温を失った指先は僕の手を放しはしなかった。
「放して……」
「大変なことになったな」
「放せよっ……!」
その瞬間。
僕の中で芽生えた疑惑は確信へと変わる。
「ずっと見ていたんでしょう?だったらどうして……」
征司はいたんだ。
僕らが四苦八苦している姿をずっと見てた。
「どうしてこんな事になるまで助けてくれなかったの?あなたなら……」
征司なら――。
こんなことになる前に
いくらだって僕らを助けることはできたはずだ。
それなのに――。
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