佐竹

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佐竹

 路線バスの車窓に映る空は予報に反し、夕刻が過ぎても暗い灰色のままだった。  正午過ぎから晴れ間が広がると伝えていたのは嘘だったのか。  派手な化粧を施したピンクのワンピースを着たお天気キャスターの顔が思い浮かび、佐竹の頭の中で爆発前の火花が散った。肩にかけた黒いバッグに手を入れる。中にはサバイバルナイフが入っていた。  あのけばけばしい嘘つきキャスターを殺す。  だが、テレビ局に佐竹のような人間が容易に入り込むことなどできない。今にも爆発しそうな頭で考えてもそれぐらいはわかる。  だから目の前にいる同じピンク色のスカートを穿いた女を代わりに殺す。  佐竹は黒縁眼鏡の奥の瞬きのない目をその女に向けた。
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