【春~半分桜~】

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「やぁ!二人とも! よう来たねぇ!待ってたよぉ!!」 店の前に着くと、 墨田のお婆ちゃんが満面の笑顔を私達を出迎えてくれた。 「わぁ、お婆ちゃん!お久しぶり!元気してるかい?!」 束砂も、喜びのあまりお婆ちゃんと『ハグ』したりしている。 いやぁ…。 束砂じゃないが… 確かにここは…いつ来ても懐かしいなぁ。 私も木造の墨田商店を見ながら目を細めて微笑んだ。 と… 「うん?」 私の目が… 商店の建物にいくつか有る…窓に止まった。 そのいくつかの窓は、もちろん、全てガラス窓なのだが… 一番はじの窓だけが、ガラスではなくブルーシートが張られている…。 「…あれ?お婆ちゃん。 あの窓どうしたんだい?」 私は、その窓を指差してお婆ちゃんに聞いた。 「あぁ、あれかい?」 お婆ちゃんは、薄く笑うとため息をついた。 「それがさぁ。 一昨日、凄い風が吹いて、そん時、道の小石が飛ばされてあの窓のガラス割っちゃったんだよ」 「ええっ?! お婆ちゃん!大丈夫?!ケガとかしなかった?」 束砂が驚いて聞いた。 「私は、大丈夫だよ! まあ、町内のガラス屋はゴールデンウィーク中、休みだしねぇ。連休明けに直してもらうわ」 「………」 「さ、そんな事より! 今日は、ウチの裏庭でお花見をしようじゃないか!実は、もう用意できてるんだよ!」 お婆ちゃんが、笑顔で両手をパンパンと叩いた。 「わぁ!お花見、良いねぇ!」 束砂も手を叩いて喜んだ。 「うん!そうだな!」 私も笑顔でうなづいた。 墨田商店の建物の裏手には、大きな庭が有る。 私達は高校時代、よくそこで日向ぼっこしたものだ。 と、いう訳で、 私達は、お婆ちゃんを先頭に裏庭へと足を向けた。
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