彼の名は・・・

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くやしいっ……。 あんなに練習したのにっ! 負けてしまった。 私は競技場のベンチの片隅で一人膝を抱えて泣いていた。 中学三年間の練習の全てを出しきるつもりで臨んだこの大会。 やれるだけのことはやって来た。 負けたって後悔なんかしない。 例えそれがどんな結果だとしても。 そう思っていたのに……。 予選タイム三位で迎えた女子百メートル決勝。 私は絶好のスタートダッシュを切ることができた。 体もいい感じにほぐれて軽い。 これは……イケる! 私は自分がまるで風になったんじゃないかっていう程の錯覚を覚えながら、周りの景色を置き去りにしていく。 視界の中に他の選手は入って来ない。 私は走りながら確信する。 間違いなく、自己ベストだ……! 私は更に踏み出す足に力を込める。 このままゴールまで走り抜ける……はずだったのに。 まさかゴール直前で足がもつれて転ぶなんて。 ああ……こんな負け方って……ないよ。 悔しくてさっきの自分自身の行動が脳内で何度もリフレインする。 その度にその映像が私の胸をどうしようもない程に締め付けて、私は目を思い切り瞑ることでその胸のもやもやをやり過ごそうとする。 無駄だって分かっているのに何度も何度もその時の映像が頭から消え去ってくれないのだ
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