“あ”『朝』

1/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

“あ”『朝』

 私には少し変わった日課がある。  きっかけは、ほんの数日前のこと。  七月某日。午前五時過ぎ。  何故だろう。目覚ましもセットしていないのに、スッキリと目が覚めてしまった。  二度寝をしようと再び目を(つむ)ってみたけれど、こんなときに限って、睡魔(すいま)は相手をしてくれないようだった。  早起きは三文の得とも言うし、たまにはこんな休日も良いかなと思い、私はカーテンの隙間(すきま)から外を(のぞ)いてみた。  外はすっかり明るくなっており、空は綺麗な夏色をしている。今日も暑くなるだろう。  突然、窓の外を誰かが通りかかった。  朝のジョギングだろう。何気なくその人に視線を向けると、私はその男性に釘付(くぎづ)けになってしまった。  何故ならば、その人が自分の好みに、驚くほどにピッタリだったからだ。  その日は特に何も予定がなく、私はずっと、今朝見た彼のことを考えていた。  清潔感のある短髪は綺麗な黒髪だった。涼しげな目元が特に素敵だったと思う。綺麗すぎないけれど整った顔立ちというのだろうか。  一体、どこの人なのだろう。  勝手に性格を考えてみようか。  誰にでも優しい穏やかな人。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!