神隠しの先の諦観

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 突然のことに頭が追いつかず呆然とする千勢に、男は不機嫌そうに告げた。 「不法侵入の異世界人は、強制送還だ。おとなしくついてこい」 「……はい?」 「話は後できく。黙ってついてこい」 「待って。それ、すごく横暴でしょ」 「話は後だって言ってんだろ」  怯みながらも千勢は思った。  この人、制服は着ているがきっと誘拐犯だ!  そう判断した彼女の行動は早かった。 「カールさぁぁぁん! 助けてぇぇぇッ、殺されるーッ!」  思い切り叫びながら雑草を入れていた籠をあいている左手でつかみ、めちゃくちゃに振り回す。 「あっ、コラ暴れるなっ。殺さねぇよ」  男は千勢を落ち着かせようとするが、命の危険が迫っていると判断した彼女は力の限り抵抗した。  さらにそこに千勢の叫びを聞きつけたカールさんが駆けつけてきた。同じく農作業中だった彼の手には草刈り鎌が握られている。  カールさんは男を見るなりカッと目を見開き、鎌を振り上げて突進してきた。 「誘拐は……犯罪だーッ!」 「うわっ」  カールの躊躇のない振り下ろしをよけ、男は早口に身分を告げた。 「異世界人取締り課の者だ! 誘拐犯じゃねえ!」     
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