91人が本棚に入れています
本棚に追加
/92ページ
登山入口で名前を書いた。
標高の高い山に登る際にはこの作業は絶対だ。
もし山で遭難した場合、身元を探す手間が省けるからだ。
ハアハアと息切れをしながらも、私は苦しくても山に登る。
『そこに山があるからだ』
などとは言わない。
ただ山に登れば私のトラウマなど無に等しいからだ。
心が澄むからだ。
けれどキシキシと揺れる吊り橋。
下山して帰り際に立ち寄った吊り橋で、私は思わぬ人と遭遇してしまった。
ドキドキと胸が激しく鼓動するのは絶対吊り橋効果ではない。
「相良さん…。」
「由井先生…。」
私は二度と会う事はないと思っていた相手と、再会した。
.
最初のコメントを投稿しよう!