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「久しぶり。」
「お…久しぶりです…。」
私はココアが入ったカップをカタカタと震える手で持ち上げた。
僅かに口を付け、すぐにテーブルに戻す。
その様子を観察するように見つめる漆黒の瞳。
「懐かしいな。」
フッと口角を上げ、その目を細める。
私は懐かしいという気持ちはわからなくもなかったけれど、それよりも恐怖の方が勝り、その顔を直視できない。
「この店二人でよく来たよな。」
「……。」
結婚前、ここは前にカフェ巡りをしていた頃に、夫と何度か通った店だった。
相良 清貴。
前夫は私を前にしても全く悪びれる様子もなく、長い足を組んでコーヒーを飲んでいる。
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