第三話 熱にうかされて

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第三話 熱にうかされて

 泣いて泣いて、日中も沈んだまま過ごして、数日経ってようやくリリーはいつも通りに過ごすことができるようになった。  幸運なことに、その調子の悪い数日間、ユーリがリリーを訪ねてくることはなかった。だから、思う存分落ち込んで、それから平静を装えるまでに回復したのだ。  だが、その数日間に変化があったのはリリーだけではなかったらしい。リリーが回復したのを見計らったかのように、殺気立った女の子が工房を訪れるようになった。 「ユーリ様の様子がここ数日おかしいんだけど、あなた何か知ってるでしょ?」  まどろみたくなるような午後、ゆったりと薬草を刻んでいると、威圧感たっぷりにやって来た女性にそう怒鳴られた。  明るい茶色の巻毛と意志の強い目つきが特徴の、気の強そうな美人だ。そういえば、城の侍女の中にいたなと、リリーは思い出した。 「あなたのせいよ! きっと、あなたのせいでユーリ様はおかしくなってしまったのよ!」 「そうやって言ってくる人が何人かいるんだけど……私のところにもここ数日来てないから、知らないのよ」       
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