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「……」
ATMの前で、芽生と昴流は顔を見あわせていた。
芽生を送る途中で、昴流は昨日聞いた冬夜の結婚祝いを記帳していた。現金でなくて振り込みなのが不思議だったけど、この金額なら当然だ。
「どうしよう……」
昴流の声が困っている。芽生も困った。返すのはおかしい。でも、簡単に受け取れない金額だ。一人っ子の芽生はよく知らないけど、仮に冬夜が昴流の兄だとしても、この金額はありえない。
芽生は自宅に帰らないで、昴流と一緒に冬夜のマンションに戻った。
「あれっ、芽生ちゃん、帰るんじゃなかった?」
冬夜は不思議そうに芽生を迎えた。
「あの……冬夜さん、記帳したんですけど」
言いづらそうな昴流とは違って、冬夜の返事はすぐだった。
「記帳したんだ。足りないなら、もう少し振り込んでもいいんだぞ」
慌てた昴流が即座に否定した。
「逆です。多すぎます。こんなにもらうわけには……」
横で芽生も頷いた。言われた冬夜は困った表情だけど、二人はもっと困る。
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