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完結まで読んだ方専用(もしもエンディング)3
◇響子◇
「あなた、食事が出来たわよ」
居間で新聞を読んでいる彼に、私は優しく声をかける。
「ああ、ありがとう。今行くよ」
彼の声は私の耳朶を心地よく揺らし、そのたびに私は幸せな気分に浸るのだ。
陽明が透を殺してくれたおかげで、私の前に障害は無くなった。
嘆き悲しむ彼が、側で支えていた私を心の拠り所とするのは至極当然だった。
そう。全ては私の望むままに事は進んだ。
私は、人生最高の幸せを手にしたのだ。
「響子、お前もあまり無理するなよ? 今はお前だけの身体じゃないんだから」
彼がテーブルに座りながら、私を気遣う言葉をかけてくれる。
それがたまらなく嬉しかった。
――そう、私のお腹には彼の子供がいる。
結婚し、二人で暮らすようになってからは、私を襲っていた拒否反応はなくなった。
きっとあれは、私の中の恐れが起こした反応だったのだろう。
私が本当の幸せをつかめるはずはないという、無意識の恐れ。
それが私の意識を蝕んでいたのだ。
でも、今は違う。
最愛の人と結婚し、私は今最高に幸せなのだ。
もう、これからは大人しく、普通の主婦として生きていこう。
彼との間にできた新しい家族と一緒に……。
あ、でも……
私は、お腹の中の子供に語りかける。
くれぐれも、私から彼を取らないでよね?
もし、彼が私よりあなたを大切に想うようなことがあれば……
あなたのこと、殺しちゃうかも知れないから……。
end
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