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「ぱあーっ」
アンテナでも立っているのだろうか。ぴょこんと顔をあげた怜空は満面の笑みだった。目をキラキラさせて小さな手のひらを一生懸命に広げて両腕を伸ばしている。
怜空の視線を辿ればいつの間にか後ろに凌が立っていた。
「わ、もう。びっくりした」
「悪い、悪い。怜空のせいでバレた」
「うおーーっ」
「オ。怜空。なんだ?どうした?」
両手を伸ばす怜空にわたしも凌も揃って両手を出した。その様子を見た九条さんはニヤニヤしている。
「りっくん、どっちがいいかなあ?」
怜空は少し迷った挙句、小さな体を捻りわたしに両手を伸ばしてきた。「やっぱりママか」と九条さんに笑われ、凌は苦笑している。
「怜空」
おいで、と凌は怜空を呼ぶ。怜空は一瞬ためらったものの凌の腕に抱かれた。
「未玖、玲ちゃんと色々積もる話もあるだろう?二時間ほどだけどゆっくりしてくれば?」
凌は怜空の顔を覗き込みながら「男は留守番だな」と笑っている。
「ね、未玖。美味しいケーキ食べよ♡梓の奢りだからちょっとリッチなカフェにでも行こうよ」
「でも」
「大丈夫よ。パパたちがいるし」
怜空は人見知りだ。九条さんたちに迷惑をかけないだろうか。
凌ひとりにして大丈夫だろうか。
不安を隠せないわたしに玲はしきりに大丈夫だと宥めてくれる。
「今夜ね、駅直結のホテルに泊まるの。その部屋で遊ばせるだけだから」
なんなら、そのホテルのラウンジでおしゃべりしよう?と言う玲の提案に怜空のことが心配ながらも頷いてしまった。
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