幼稚園バス

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幼稚園バス

エブリスタ幼稚園に入園してからの、ある日のこと…。 水色の園服を着て、黄色の帽子をかぶった女の子が泣いていました。 『幼稚園に行くのやだ~』 あまりにも泣くので、お母さんは理由を聞いてみました。 すると女の子は 『あのバス…可愛くないもん』と答えます。 泣きながらバス停に着くとごく普通の園バスから先生が降りてきて、 『おはよう、あれ?今日はどうしたのかな?』 『…バス…可愛くないもん…』 泣き顔でプウッ頬を膨らませた女の子。 お母さんも先生もそれを聞いて困ってしまいました。 先に乗っていた、同じさくら組さんのお友達のQUEちゃんのお隣にちょこんと座りました。 QUEちゃんは女の子の様子をじっと見て呟きました。 『QUEも頑張ってきまちた。一緒だね』 後ろの席に座っていた束砂ちゃんが言いました。 『もっと楽しいバスに乗りたいでし。あとタコさんのぬいぐるみも置いてほしいでし。あとは忍者ごっこもしたいでし』 楽しくバスに乗る…。 女の子はQUEちゃんと束砂ちゃんに、こしょこしょとナイショのお話しを始めました。 それを聞いたふたりは頷きながら聞いています。 『お外でお絵描きをしましょう~』 と先生は言いました。 みんなはそれぞれ思い思いのところで絵を描いています。 あれれ?あの3人は……いました、いました…あんな所に…さあ、どこかわかるかな? QUEちゃんが束砂ちゃんと女の子に何かを言い、2人はうんうんと頷いて絵を描き始めました。 その様子を園長先生がこっそり見ているのを知らずにどんどん描いていきます。 『出来た~』『出来たでし~♪』 2人の声にQUEちゃんはにっこにこ。 そしてQUEちゃんも何かを描き加えました。 さあ、出来ましたよ。 『よく描けているね、3人とも』 園長先生は言いました。 3人はびっくりしました。 そして怒られると思い、ドキドキ、ハラハラ、しょんぼり…。 何故なら画用紙に描いたのではなく…そう、 園バスに絵を描いたのです。 かわいいお姫様の絵とかわいいタコさんの絵、そしてバスの後ろにはペンギンさんと何故かプテラノドンの絵をくれよんで描いたのでした。 窓の内側からタコさんとペンギンさんがにっこにこと笑っています。 しかも、バスの内側にはお星さまやお空の雲、月まで描かれています。 そしてバスの中には何故か折り紙で作られた忍者グッズが…。 これにはクラスのみんなもびっくり。 他の先生たちもびっくりです。 クラスの先生は聞きました。 『みんなのバスにどうして絵を?ダメでしょ』 『だって可愛くしたかったもん』 『楽しく乗りたいでし』 『3人で頑張ったんでちゅよ』 それぞれ言いました。 『先生たちもみんなに毎日楽しくきてほしいよ、でもね…これはダメでしょ。みんなが乗るものに絵を描いちゃ…』 先生にそう言われて3人とも 『ごめんなさい』『ごめんなさいでし』『ごめんなさいでちゅ』 と謝りました。 『まあ、いいじゃないですか。これはこれでエブリスタ幼稚園に通う子供たちが楽しく通ってくれるのなら…』 と園長先生は言いました。 『でも、それでは…』 みんなが落書きをしてしまいます…とクラスの先生は困った顔をしています。 園長先生は言いました。 『じつはね、みんなに描いてもらった絵をバスの側面にラッピングしようかと思っていたんだよ。 年に一度、その行事を作ろうかと。 そしてその前で描いた子達で記念撮影をしてから次の年までそのままにしようかと、ね』 QUEちゃん、束砂ちゃん、女の子の方を見て園長先生はウィンクをしました。 『君たちはその第1号だよ。後で記念撮影しようね』 『わぁーい』 『やったでし』 『ありがとうでちゅ』 と3人はにっこにこ。 後日、本当に園長先生は3人が描いた絵を元にラッピングバスへと変身させちゃいました。 もちろん、第1号である3人はバスの前で記念撮影。 3人もにっこにこ。 バスのお姫様もタコさんもペンギンさんもプテラノドンさんもにっこにこ。 そうして、毎年この時期になるとみんなが描いた絵を元にごく普通のだったバスが、ラッピングバスに大変身し、その前で記念撮影。 みんな楽しく幼稚園に通いましたとさ。 おしまい
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