269人が本棚に入れています
本棚に追加
/263ページ
1
「おじさんだろ?」
学生で混み合うカフェテリアで、神﨑蒼は鼻を鳴らした。
「確かさんじゅう…いちには余裕でいってるはずだよな、あの先生」
大盛カツカレーをスプーンでひと掬いして、蒼は大きく開けた口の中に収めた。
「今年大学に入学したばっかの俺らからしたら、おじさん以外の何者でもない」
カレーを咀嚼し終わり、蒼はコップの水を一気に飲み乾した。
ひと呼吸置き。
それから向かい合って座っていた人物を見据え、とどめのひとことを放つ。
「ひと回りも離れたおじさんを好きとか、お前の男の趣味一体どうなってんだよ」
小馬鹿にしたように嗤われ。
目の前に腰を下ろしていた涼風千愛は、怒りを爆発させた。
「蒼、あんたね…!」
両手でテーブルを叩き、身を乗り出す。
隣りに座っていた男子グループが驚いたようにこちらを窺ってきたが、この際どうでもいい。
今まで黙って聞いていたが、我慢の限界だった。
自分の事はともかく、彼の事を侮辱されたままではおられない。
それは絶対、許し難かった。
最初のコメントを投稿しよう!