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私は今、噎せ返るような黄色い花の香りの中に横たわっている。
毛髪に一本たりとも黒はなく、白。
顔の皮膚には幾つもの皺が深く刻まれ、お世辞にも美しいとは言えないだろう。
けれど、私は幸せだった。
この〝最後〟の百年が、とても幸せだった。
*
私が最初に産声を上げたのは、いつだったか。
多分、五百年は前だったと思う。
時は戦国。生まれてまもない私は流行病にかかり、生後まもなく天に召された。
そこで私が出会ったのは、所謂神様という存在だった。
あの時代は私以外にも多くの乳飲み子が病によって命を落とし、天国は小さな魂で溢れかえっていた。
それを哀れと思ったのか、神様はいくつかの魂を次の時代に生まれる命へと送ってくれたのだ。
輪廻転生である。
だが、私にとってそれは神様のエゴでしかなかった。新しい時代に生まれ変わっても、生きていくというのは楽しい事よりも辛いことの方が多い。
同じく転生した仲間の中には歴史に残る偉業を成した人もいるらしいが、私は早く寿命が来ればいいと願うばかりだった。
しかし、願いは虚しく、神様は私を次々に転生させていった。
いい加減嫌気がさす。
だから、どの時代の私も無気力で、ただ生きているだけだった。ただ生きて、死んでいき、また生かされる。
そんな繰り返しが永遠に続くのだと、百年前までは諦めていた。
〝次が最後ですよ〟
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