番外編第1章 過去・香代子

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 えっ……。  何で……。  何でわかってくれないの?  香代子は戸惑いながらも、 「な、長嶺先輩のことが……」  と必死に声を振り絞る。  その言葉に、長嶺が急に慌てふためき始める。 「えっ!? えっ!? 僕!?」  長嶺は自分を指さしながら言う。香代子はコクンと小さく頷いた。 「長嶺先輩が好きです。付き合ってもらえませんか?」  香代子は、今度はハッキリと言った。 「ぼ、僕なんかでいいの?」 「はい。長嶺先輩がいいんです」 「えっと……」  長嶺は照れているのか、右手で頭をポリポリと掻きながら、 「実は僕もずっと佐々木が好きだったんだ。こんな僕で良ければ付き合ってください」  と、香代子の方に手を差し出してきた。香代子はそっとその手を握る。長嶺の手は、ほんのりと温かく、まるで女子の手のように柔らかかった。  香代子は嬉しすぎて、声を発することもできなかった。ただ、しばらくの間、黙って長嶺の手を握り続けた。
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