1818人が本棚に入れています
本棚に追加
/680ページ
えっ……。
何で……。
何でわかってくれないの?
香代子は戸惑いながらも、
「な、長嶺先輩のことが……」
と必死に声を振り絞る。
その言葉に、長嶺が急に慌てふためき始める。
「えっ!? えっ!? 僕!?」
長嶺は自分を指さしながら言う。香代子はコクンと小さく頷いた。
「長嶺先輩が好きです。付き合ってもらえませんか?」
香代子は、今度はハッキリと言った。
「ぼ、僕なんかでいいの?」
「はい。長嶺先輩がいいんです」
「えっと……」
長嶺は照れているのか、右手で頭をポリポリと掻きながら、
「実は僕もずっと佐々木が好きだったんだ。こんな僕で良ければ付き合ってください」
と、香代子の方に手を差し出してきた。香代子はそっとその手を握る。長嶺の手は、ほんのりと温かく、まるで女子の手のように柔らかかった。
香代子は嬉しすぎて、声を発することもできなかった。ただ、しばらくの間、黙って長嶺の手を握り続けた。
最初のコメントを投稿しよう!