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幼稚園の魔術師
1
「今日も楽しく、お絵かきとぬり絵をはじめましょう」
アブラスタ魔法幼稚園の園長ツクルモノ・デ・アブラスタはテーブルに就いた園児たちに笑顔でそういった。
魔法幼稚園では缶ケースに入った色鉛筆と画用紙一枚で、お絵かきとぬり絵をするが、これらには特殊な魔法の力はない。園児たちが自由にイメージしたものを現実に呼び出す力を引き出すための道具に過ぎない。
「出来たわ。古代マジプシャ王朝の装飾品よ」
一人の女児が画用紙に書いた異国の飾り物を召喚した。素材の金の輝かしい光沢や、細かい彫刻、ジャラジャラとした金属音まで本物の装飾品とひけをとらない見事な造詣である。
「古代マジプシャは、女性の社会進出が盛んだった歴史があり、特に女性のお洒落がゴージャスでデザインも良かったそうですよ。歴史をよく知り、飾り物のデザインも細かく描けるのは、普段から目にしているということですね」
ツクルモノは、装飾品を召喚した女児を誉めと「見せて見せて」とほかの女児たちが殺到するが、一人黙々とお絵かきをする女児もいる。
「あたしは違うもん」
そう言って書いたのは、可愛らしい女の子の顔が描かれた卵型の人形。マドロシカといわれる北方の民芸品である。
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