幼稚園の魔術師

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 「それは北方ローシャの民芸品マドロシカではないですか。マドロシカは子孫繁栄を願って作られる木彫りの人形で、若い女性に人気です。ふむ。お二人とも、ご両親は玩具屋さんか装飾屋をしてらっしゃいますね」  「すごい、園長先生どうしてわかったの?」  「お二人とも、生活で普段から目にするものを精巧に書いてます。知識もあるということは両親がお客さんに説明するのを聞いていたからです。見たものをそっくりに書くのは召喚魔法の第一歩ですよ」  ツクルモノはうんうんと頷いた。  「そうなんだ。玩具屋ねぇ」  「あんたはお飾りじゃない」  「喧嘩はそこまで、お二人の両親は立派な仕事なさってるんです。お互い仲よくしましょう」  やれやれと思いながら、ツクルモノは園児たちのテーブルを見て回る。  「出来ましたっ!」  女児の一人リンが画用紙から洋服を召喚した。フリルスカートの上に、エプロンの付いた東方の民芸衣装ダンドールだ。フリルの繊細な模様も見事に描かれており、しっかりと縫い込んである。  「見事なダンドールです。リンさんはお洒落さんですが、着るには少し小さいかも知れません」
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