運命とは、つくるものらしいです。

1/10
219人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

運命とは、つくるものらしいです。

「もっと食べたかった?」 下げられていく彼のお皿を見つめていると、彼が言った。 そういうつもりではなかったのだけど、もしかすると、物欲しそうな顔をしてしまっていたのかもしれない。慌てて首を振った。 「い、いえっ、もうお腹いっぱいです」 「そう? だったらいいけど」 ゆったりと微笑んだ彼は、華奢なグラスを傾ける。 彼のその姿は絵になりすぎていて、あまりの眩しさに直視出来ないという気持ちと、一時も見逃したくないという気持ちがせめぎ合う。 ホテルの高層階に位置するフレンチレストラン。二人で使うには贅沢なほどに広いガラス窓に囲まれた個室、大きなガラスのその下では、無数の光がきらきらと煌めき、まるで宝石を散りばめたようだ。 贅沢な夜景。高級な料理。そして、わたしの向かいに座る彼。 この非日常な空間に少しだけ慣れることが出来たのは、ついさっき。メイン料理の牛フィレ肉のグリエを食べ終わった頃のことだ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!