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運命とは、つくるものらしいです。
「もっと食べたかった?」
下げられていく彼のお皿を見つめていると、彼が言った。
そういうつもりではなかったのだけど、もしかすると、物欲しそうな顔をしてしまっていたのかもしれない。慌てて首を振った。
「い、いえっ、もうお腹いっぱいです」
「そう? だったらいいけど」
ゆったりと微笑んだ彼は、華奢なグラスを傾ける。
彼のその姿は絵になりすぎていて、あまりの眩しさに直視出来ないという気持ちと、一時も見逃したくないという気持ちがせめぎ合う。
ホテルの高層階に位置するフレンチレストラン。二人で使うには贅沢なほどに広いガラス窓に囲まれた個室、大きなガラスのその下では、無数の光がきらきらと煌めき、まるで宝石を散りばめたようだ。
贅沢な夜景。高級な料理。そして、わたしの向かいに座る彼。
この非日常な空間に少しだけ慣れることが出来たのは、ついさっき。メイン料理の牛フィレ肉のグリエを食べ終わった頃のことだ。
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