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振り返るとキミがいた。
キミは恥ずかしそうに伏し目がちにボクの顔を見つめていた。
「兄貴……や!」
ボクはキミの顔を見詰めたまま身動きが取れなかった。
ボクはどれだけこの日を待ちわびていたのだろう。
キミのその表情はいつの日かボクが見つめていたキミそのものだった。
キミはちっとも変っていない。
その澄んだ瞳、サラサラの髪、鈴の音色のような声。
全ての記憶が蘇ってきた。
そう、ボクはこの時を本当に待ちわびていた。
キミがボクの目の前にいる奇跡。
キミを本当に大切だと気づいた瞬間にボクの手のひらからスラリと零れ落ちたあの日を思い返しながら噛みしめていた。
「久しぶりだね。華菜」
言いたいことはたくさんあった。
気の利いた言葉もたくさん用意していた。
でも、キミの顔を見たら全てが飛んでいった。
ボクはもっとキミを感じていたかった。
だから、キミをずっと見つめていたかった。
でも、ボクの目は、操り人形のようにぎこちない流線形を描いてキミから逸れていった。
キミは気づいていたかな?
ボクの胸は張り裂けそうなほど強く鼓動をしていたことを。
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