降水確率100%

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 少女Cは父親から「いやらしいことをされる」と言い、少女Dは小学校の用務員の爺からCと同じような目に遭っている。 俺たちはある日、誰かによって召喚されたかのように夕暮れ時、同じ公園にいた。もうすぐ日が暮れて暗くなるというのに誰も帰ろうとはしない。帰りたくないからだ。そうしてぽつりぽつりと誰ともなく話し始めた。俺たちはみんな、大人から何かしらの虐待の受けている小学五年生だということを知った。 みんな死んだ魚の目をしていた。俺たちは全員諦めていた。大人に抵抗する力も知恵もお金も、俺たちは持っていなかったからだ。虐待されようが大人がいないと俺たちは生きていけないからだ。  俺には父親がいない。シングルマザーのネグレクトだ。毎朝起きるとテーブルに菓子パンと五百円が置かれている。それが一日の食事代だ。千円札が一枚置かれている日は二日間、母親は家に帰ってこないという意味だ。けれど二日どころか四日帰ってこない時もあるからお金は大事にしないといけない。母親は本当に昼も夜も仕事漬けの毎日を送っているのか? と俺は疑問を抱いている。がむしゃらに働いている人はあんな顔をしていないだろう。子供だと思って舐めているんだ。小五にもなれば分かるんだよ。アンタのその顔が母親の顔か、オンナの顔かくらい。  少女Cは言う。  「お父さん怖い。けどお母さんも怖い」と。  母親は父親が娘に性的虐待を行っているのを知っていながら知らないフリを続けているようだ。一度「お母さん助けて!」と叫んだが、母親は来てくれなかった。しかも父親が性の対象を自分ではなく娘に向けたことで嫉妬さえ抱いているらしい。母親はCに暴力をふるったりはしない。けれどふとした瞬間、恐ろしいほどの憎悪の目で少女Cを睨んでくるそうだ。その目が怖いと少女Cは肩をガタガタと震わせた。  「私が悪いの? 私のせいなの?」と少女Cが俺たちに問いかける。俺たちは口を揃えて「そんなわけないだろう!」と言った。少女Cは小さく微笑んだ。「ありがとう」と言った。ありがとうなんて言う必要ないのに。悪いのは少女Cの両親で、お前は何も悪くないのに。
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