第八章 月下の王 三

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 千手は、俺の姿を見続けていて、密かに護衛も用意したらしい。だが、どこに護衛をつけたのか、教えてはくれなかった。 「千手、世羅がしているのは、復讐なのかな?」  俺から、両親を奪った事故の原因を作った政治家や、その家族などが標的になっていた。 『そうかもね』  ただ殺すのではなく、嬲り殺しにしてゆく。それは、世羅ではあり得ない事のような気もしていた。 「香里名はあやつり人形だよね。誰が、操っているのだろう」  俺は香里名の周辺に誰がいるのか確認すると、ダンボールの中に潜った。俺はタオルに顔を埋めてから、風呂に入っていない事を思いだした。  椿生のガレージは水が出るが、湯は出てこない。でも、臭いよりもましかと、ペンギンの着ぐるみを脱ぐと、水道の蛇口をひねった。そのまま水を浴びていると、滝修行のような気分になる。荷物をコンパクトにまとめてしまったため、シャンプーなどは持ってきていないので、そこら辺にある石鹸で、身体を洗ってみたら肌がガサガサになってしまった。 「これ洗車用?まあ、いいか」  そのまま、タオルで体を拭いて、ダンボールに入ろうとすると、椿生のガレージに車が入ってきていた。
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