第十六章『事の顛末 宴の始末』

28/28
921人が本棚に入れています
本棚に追加
/483ページ
 鈴を握り締めて色々なことを思い出して俯くと、鈴彦が私の頭に手を乗せた。 「此度(こたび)は大儀であったな」 「……どこかで見てたの?」 「ちらりちらりと。池の傍で何かが起こっていたくらいの事は解かる」 「ちょっとは助けようと思わなかったわけ?」 「当代の者が何とかするであろう。既に鬼籍の者に何を求めている。甘ったれるな」 「でもさー、ちょっとくらいさー」 「水彦が助けたではないか」 「えっ。そこまで知ってんの?」 「……現世に存在する我らには色々と制約があり、繋がっている。さて。お竜が首を伸ばして待っているので帰る。またな」  ぽんぽんと二度私の頭を叩いた鈴彦はふわりと浮かび上がって、スズカケノ池の方角へ飛び立つ。  世代が遠いと正武家特有の過保護は発動されないのかな。  そんなことを考えながら青空を見上げていると、玉彦が私の手を取る。 「鈴が見つかったと稀人たちに教えねば」 「あ、うん」 「それにしてもスズカケノ池に流れ着いていたとはな」 「井戸の流水はスズカケノ池に流れ込んでいるのかしらね」 「いや、しかし……。須藤の見立てでは七龍川だろうと言っていた。地形に詳しい須藤の見立てが間違っているとは思えぬ。俺ですら七龍川方面だろうと思っていた。一体これは……」 「なんにしたって鈴は無事に見つかったんだし、良いじゃないの。そんなに考えたって、わかんないわよ。そういうものだからそういうものだと思うしかないじゃないの」 「比和子に言われると説得力がなく、腹が立つのは何故か……」 「ほらほら皆のとこに行こう。早く教えてあげないと捜索に出ちゃうわよ」  考え込む玉彦の背に両手を当てて歩きだせば、帯紐に巻き付けた青紐の鈴がチリリと鳴る。  すると玉彦の持つ赤紐の鈴が、彼の袂でチリリと応えた。
/483ページ

最初のコメントを投稿しよう!