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100万ポイントで秘密の小部屋へ
その本屋は、大正時代の建築だと言われている。
石造りでゴシック的な洋館かと思えば、内部に和風が散りばめられたりしている。
都会のビルの谷間に、ポツンと、そこだけ時間が停まったかのように建っている。
「変わった名前だし、変な絵本とか売ってるし。商売っ気ゼロだよね」
その本屋は、「全盛館」という名前で営業している。
店主は、絶対にサングラスを外さない胡散臭い男で、「天童陽人」と言った。
見方によっては20歳前後にも見えるし、40歳に見える時もある。つまり、年齢不詳だ。
「ポイント貯めて、『審査』受ければ、『秘密の小部屋』に入れるよ」
少し目線の高いカウンターに座る天童は、いつもニヤケ顔で言うのだ。
ここで本を買ったり、借りたりするとポイントが貯まる。
「てかさ、女子高生に100万ポイントって、きつくない?」
県立高校1年生の久保河内絵里理佳は、いつもぼやく。
スポーツ万能で、古武道「昇天流」の女流伝承者だという変わった少女だった。あまりにも元気で、男勝りであったため、祖母がこの本屋に通わせていたのだ。
「まあ、本を買って100ポイント、借りて50ポイントだから、1万冊本買うか、2万冊借りればすぐじゃん」
そんな実現不可能なことを、天童は真顔で言う。
「はぁ? 天童さん、マジでそんなこと言ってんの? 1万冊って、1日1冊買っても、27年かかんのよ。絶対無理だって!」
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