窓際の一匹狼

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窓際の一匹狼

―――18時44分と、45秒…… 左手首の電波腕時計をチラ見すると、 チョークを黒板の下の引き出しに戻す。 「それでは、これで授業を終わりに……」 「っしゃー、飯食ってこ~!」 「お~!腹減ったぁ」 教室の一番奧の席でフライング気味に声をあげた男子生徒二人に、俺の言葉は遮られた。 直後に、放送からチャイムが流れる。 またあいつら…… 心の中で舌打ちをして、小さく溜め息を吐く。 授業中も無駄口ばかり叩きやがって。 親の金で予備校通わせてもらってるくせに、何しに来てるんだ、ったく…… ああいう奴等は結局浪人して来年もここに通う羽目になるんだよ。まぁ、俺は知ったこっちゃないけど。 悪いけど、やる気のない奴に構ってる暇はない。 大学受験はそんなに甘くない。 今日最後の授業を終えた教室は、一瞬のざわつきの後にあっさりと静寂を取り戻す。 とっとと帰宅する生徒、自習室へ直行する生徒。大抵はこのどちらか。 そして中には、例外も……いる。 窓際の席で片肘をついて、じーっと外を眺めている一人の女子生徒。 周りに殆ど人が居なくなったというのに、 まるでそれに気づいていないかのようにピクリとも動かない彼女に、俺は仕方なく教壇から声を掛けた。 「朝日(あさひ)。」 「……」 無反応とは度胸据わってんなぁ…… 俺は大袈裟に咳払いをしてもう一度呼び掛ける。 「……朝日、終わってんだけど。」 「……え、あ」
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