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気のせいかな。
しょーちゃんの声が聞こえる。
離れた場所から、一生懸命俺のこと呼んでるみたいな。
「れー!
れーーー!
あれ? おっかしーなー」
……気のせいじゃない。
高くも低くもない、独特の響きを持ったしょーちゃんの声。こっちに近づいて来てる。
次の瞬間、俺は迷わず、目の前の知らない女の子に微笑みかけた。
優しいけどきっぱりさっぱり取りつくしまのない、バイバイ用の笑顔。
ほんとは、まるで知らないってわけじゃない女の子。
けど、しょーちゃんの声で気もそぞろな今、数分前に聞いたばかりの名前なんてもう忘却の彼方。
「ごめんね?
呼ばれてるから」
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