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人見地蔵
都会の一等地に小さく佇むお地蔵さん。
まるで似つかわしくない苔むした姿から、若年層からは『苔地蔵』なんて呼ばれている。
今日も通りを多くの人達が交差する。
スマートフォンを見ながら歩く人。
時計を忙しなく見ては足早に通り過ぎる人。
子供を抱いて世間話をする主婦。
私は昔からこうして人の流れを見つめている。
今も変わらず、ただただに人の表情や、動きを眺めている。
そんなある日のこと。
目の前に大きなイタリアンのお店が建った。
イタリア語など勿論、1文字も読むことはできない。
けれど、開店祝いのフラワーギフトが店先に置かれており、看板が立つとそこには日付のような数字がある。
なるほど、開店は明後日か。
また沢山の人達が私の前を通り過ぎるのだろう。
また淡々と眺めるとしよう。
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