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開店当日、やはりお店の扉が開く前から人が集まってくる。
先頭にはブランドバックを携えた女性が3人。
嬉々とした表情で店先の写真を撮っている。
ブランドは光り輝くように、女性の品格を表すらしい。
時代は変わってしまい、趣というものは重要ではなくなったらしい。
次に並んだのは小粋な中折れ帽を被ったお爺さんと、質素で猫背だが、昔からどこにでもいる優しげな白髪のお婆さん。
表情はあまり変わらないが、店を上から下まで眺めては一言一言をゆったりと紡いでいる。
更に後ろに並んだのは、子供を抱いた普段着のお父さんと、控えめに真珠のブレスレットをして、背筋を伸ばすお母さん。
記念日で奮発したのか、誕生のお祝いか。
お父さんが子供を抱えたまま、鼻息が聞こえるような所作でお店の説明をしているよう。
お母さんは押され気味に、愛想笑いをしてみせて、お父さんの背中をぽんと叩いた。
その後も続々と人は行列を作る。
今では都会の高層ビルやらが立ち並んではいるが、昔は田舎道で、子供が騒いでいたり、百姓が木陰でおむすびを食べていたり。
時は移ろいでいくけれど、大名行列のような、堅苦しい表情の人々ではなく、嬉々とした表情を見せる人々に、浮世の平穏なことを知らされる。
こうして移りゆく時代の中で、ずっと先まで眺めていることだろう。
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