百物語インザ常闇

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 そんな中、「大体よお……」としばらくぶりに、和太鼓のように野太く響く声が静寂を裂いた。 「五人で九十九話なんだから、一人当たり二十個は話を用意しておくもんだろうが。お前ら、他人任せが過ぎないか?」  すると、安っぽいエレキギターのように割れそうな声が反論する。 「いやいや、そういうお前だって用意していなかったんじゃないか。だからこんなことになっているんだろう? 文句を言える立場かよ」 「馬鹿を言え。俺はもう十九個も話してる。この中では一番多いぞ」 「十九じゃ一話足りないじゃないか。それに大差もない。威張るな、威張るな。結局、お前ももうネタ切れなんだろ?」 「いや、用意してた話をいくつか他の奴に言われちまったんだよ。しょうがないだろう」  二人が言い合っていると、「それを言ったら私だってそうよ」と、ピアノのようにハキハキとした活舌の良い声が割って入った。 「……特に都市伝説系はかなり重複したなあ。せっかく色々調べてきたのにさ」  すると、「典型的な怪談はやっぱりそうなっちゃうよねえ」と、木琴のように丸く跳ねた声も応じた。 「……かと言って、実体験で語れるようなことなんてなかなかないし。そう考えるとさ、九十九話って意外と難しくない?」  木琴が問い掛けると、答える代わりに誰からともなく深い溜め息がこぼれる。
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