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序章
草木も眠る丑三つ時、男はふと目を覚ました。
月明かりが差し込み、遠慮がちに顔を照らしている。
男は傍らに眠る女を見やった。背中を向けて寝入っている。
結い上げられた髷の下に見えるのは、白くて長い首。
はだけた着物からは、息と共に華奢な肩が見え隠れしている。
月明かりに照らされ、艶めかしく男を誘う。
堪らずそっと手を伸ばした時だった。
微かな音を立てながら、女の首がしゅるしゅると
伸び始めたではないか。白い首は伸び続け、顔が行灯まで
行き着くと、油をぺちゃぺちゃと美味そうになめる。
月明かりに照らされるは、女の白い首と妖艶な顔。
信じられない光景に呆けていた男は、やっと言葉を口にした。
「なんと、美しい……」
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